<現地大学紹介>IT×グローバルの二刀流戦略を提唱「ビヌス大学 / Bina Nusantara University」

ここ数年、日本企業はインドネシアでの理系人材の採用に乗り出していますが、ほとんどの場合、その採用対象はインドネシア大学・バンドン工科大学、ガジャ・マダ大学の「御三家」に限られているケースが多く、他の大学について知る機会すらないという状況になっています。その3校に限らず、より多くの優秀な人材のキャリア支援に注力しているため、随時ご紹介していきます。  

今回ご紹介する学校は「Bina Nusantara University」、通称ビヌス大学(Binus大学)です。

 ビヌス大学とは?

ビヌス大学は、1981年創立のインドネシアを代表する私立大学です。現在では、ジャカルタやバンドンをはじめ、インドネシア国内に8キャンパスを構えています。これまでの卒業生は12万人を超えており、インドネシア国内でも広いネットワークを築いています。  

世界大学ランキングを発表しているuniRankによると、2023年度のインドネシア国内の私立大学のランキングではビヌス大学は1位に輝いています。幅広い工学部のほか、経済学部、心理学部、文学部などの文系学部もあり、インドネシアでもトップ総合大学として広く浸透しています。授業も英語で行われています。

また、勉学のみならず、人としての人格形成や精神面を養うべく様々な学内プログラムも提供しています。

ビヌス大学の特長

ビヌス大学の最大の特長は以下の2点であるといえます。  

①「卒業生の3人に2人は海外で活躍を」という明確なグローバル方針を掲げていること

②インドネシア教育文化省から”ベスト・コンピューター・アカデミー”に選出されるなどインドネシアでも有数のIT教育機関であること  

上記2つの特長がゆえ、ビジネス界に錚々たる実力を持った卒業生を輩出しています。インドネシア最大ECプラットフォーム「Tokopedia」の創業者William Tanuwijaya氏はビヌス大学の情報工学、語学学習EduTech「bahaso」の創業者Tyovan Ari Widagdo氏もビヌス出身です。

そのほか、歌手のRaisaAshantyなどもビヌス大学卒業であり、エンターテイメント界にも突出した人材を送り出しています。

ビヌス大学生と日本の採用市場

先述の通り、ビヌス大学の一つのモットーは「世界で活躍できる人材を輩出すること」であり、欧米で進学をする学生も少なくありません。

日本での就職機会は現状、然程多くはありませんが、実際にGoogle Japanでエンジニアとして活躍する卒業生やAccenture Japanでコンサルタントとして働く卒業生もいます。

これから高度な「IT技術」「グローバル精神」を備えた二刀流学生は、日本の採用市場での価値が上がっていくことは間違いありません。

しかし、学生にとって働く場所の選択肢は日本だけではなく、シンガポール、オーストラリア、ドイツなどが魅力的な国として認識されており、日本企業が世界的な人材争奪戦にどのように挑んでいくのか、戦略とビジョンが重要になってくるでしょう。

和田 海二(わだ かいじ) キャリアダイバーシティ株式会社 代表取締役
早稲田大学国際教養学部卒業後、インドネシア・マレーシア向けインバウンドメディアに入社。その後、インドネシアに2年間駐在し、現地の教育機関で現地スタッフ20名および学生200名をマネジメントに従事。2020年、インドネシア人材キャリア支援事業を展開するキャリアダイバーシティ株式会社を設立。JETROインドネシア慶應義塾大学SFCなどでゲスト講師として講演を実施。外国人雇用管理主任者、インドネシア・教育文化省主催インドネシア語コンテスト2023(リポーター部門)世界一位。BBCインドネシア、NHK Worldでの特集実績もある。

インドネシアに在住してみてわかった「日本企業がインドネシア人材を採用しやすい3つの理由」

日本国内での人材採用も近年、難度が上がってきており海外からの採用をお考えの企業も増えて来ています。今回は、どこの国から人材を採用するか検討している方を主な対象として、筆者がインドネシアに在住し、1,000名近くのインドネシア人学生と関わった経験に基づき、日本企業がインドネシア人材を採用するメリットを紹介します。  

(1)日本語学習者数世界2位

日本企業で外国人が働く際の一番のハードルは「日本語」です。社内では日本語が公用語、お客様とのコミュニケーションも日本語という企業が大半であり、日本語の習得は外国人採用を行う上での前提となることが多いでしょう。

インドネシアでは、日本語がカリキュラムに組み込まれている中学校や高校もあり、日本語学習者数約71万人(2018年時点 国際交流基金)となっており、中国に次いで世界2位となっています。東南アジア第2位、世界第5位の日本語学者数を誇るタイは約18万500人と大きく引き離しています。  

また、インドネシア語と日本語の発音が近いこともあり、他の東南アジアの国に比べると発音がより日本人の発音に近いとも言われています。そのため、既に日本語ができる人を採用することも他国と比較するとハードルは下がりますし、日本語をこれから学習するという心理的な壁も低いといえます。

  (2)チームワークを大切にする価値観

インドネシア人はコミュニティや人との繋がりをとても大切にします。実際に日本でも以下のような数多くのインドネシア人コミュニティがあります。

・技能実習生コミュニティ
・介護・看護師コミュニティ
・イスラム勉強コミュニティ
・留学生コミュニティ
・家族向けコミュニティ  など  


その根底には、相互扶助の精神があり、組織やコミュニティに積極的に関わって貢献していくことの美徳がインドネシア国民のバックボーンとして存在しています。

会社でも直接的な対立や不和をなるべく避け、円滑に物事を進めるように考える傾向が多く、この点では日本人の感覚に近いともいえます。感情的になる場面もあまりなく、組織内への順応さは日本の企業にとって魅力的かもしれません。

  (3)日本文化への接点

インドネシアの道路を歩いていると、Honda、Mitsubishi、Toyotaのロゴをつけた車よく見かけます。また、ポカリスエットの広告看板やミスタードーナツや吉野家の店舗など、日本でもお馴染みのブランドが幅広く浸透しています。テレビをつければ、日本のアニメやバラエティなども見ることができ、文化的・経済的な密接な関わりを感じることができます。また、第二次世界大戦中に日本がインドネシアに南進していたことから、戦後、日本から莫大な支援がインドネシアになされ、多くの交流が生まれています。  

インドネシア人は生まれた時からそのような環境で育っているため、日本語を全く聞いたことがないという人はあまりいません。何かしらで日本との接点があり、日本文化へ接触しているのです。日本が未知の国で、どのような文化を有しているのか全くわからないというインドネシア人は限りなく少ないのです。  

実は、このように日本の企業とインドネシア人の親和性は強く、実際にインドネシア人を採用した企業からも同様の声が寄せられています。

日本人からすると、「インドネシア=バリでバカンス」というようなイメージが強いかもしれませんが、インドネシア人からすると日本は割と心理的な距離が近い国なのです。  

和田 海二(わだ かいじ) キャリアダイバーシティ株式会社 代表取締役
早稲田大学国際教養学部卒業後、インドネシア・マレーシア向けインバウンドメディアに入社。その後、インドネシアに2年間駐在し、現地の教育機関で現地スタッフ20名および学生200名をマネジメントに従事。2020年、インドネシア人材キャリア支援事業を展開するキャリアダイバーシティ株式会社を設立。JETROインドネシア慶應義塾大学SFCなどでゲスト講師として講演を実施。外国人雇用管理主任者、インドネシア・教育文化省主催インドネシア語コンテスト2023(リポーター部門)世界一位。BBCインドネシア、NHK Worldでの特集実績もある。

なぜ、今インドネシア理系人材が注目されている?アジアで起きている日系企業の人材採用の実態

なぜ、インドネシア市場に注目している企業が増えているのか?

 弊社は2020年に設立して以来、インドネシア理系人材の育成・紹介を行なっており、インドネシア理系人材に関心がある企業と随時商談をさせていただいています。

2020年〜2021年にかけてはコロナ禍のため、海外人材の採用に消極的な企業が大半でありましたが、2022〜2023年とコロナ禍が落ち着き始め、いよいよ企業が海外人材の採用に乗り始めています。

もちろんインドネシア市場を狙った企業からのお問い合わせも多く、そのインドネシア市場が注目されている背景を本記事では解説いたします。  

2000年初期の人材獲得の主戦場は中国

日本では2000年初期、製造業をはじめとする数多くの日系企業がより人件費が安価な中国へと生産拠点や工場を中国へと移転し始めました。それに伴い、技能実習生をはじめ中国からの人材獲得が盛り上がり始めていた時期でした。

しかしながら、中国の経済成長は著しく、やがて都心部では既に日本の給与基準を上回る事態に直面し、日本で就労を希望する労働者層が一気に減少し、中国への進出・中国からの人材採用は下火になってしまったのです。  

「NEXTチャイナ」としての採用市場

そこで、日系企業が目につけたのがベトナムだったのです。中国の次の拠点「NEXTチャイナ」を目指し、ベトナムへと製造拠点などを移していったのです。中国からも陸続きであり、日本から5時間半と比較的物理的・心理的距離も程よい位置にあることに加え、中国に比べ経済成長が遅く、日本との賃金格差があったため、日系企業で働きたいベトナム人がたくさんいたことも「NEXTチャイナ」のターゲットになった理由といわれています。

人材獲得のマーケットとしても魅力的であり、技能実習生をはじめとしてベトナム人人材の獲得合戦が2010年代に始まりました。その結果、日本在住外国人の国別比率で韓国を追い越し中国につぐ第二位を記録し、約50万人近くのベトナム人が日本に在住してます。しかし、近年ベトナム国内の賃金も著しく上昇しているほか、欧米系企業が日本企業よりもはるかに高い金額の給与を提示するため、人材獲得市場では日本の居場所がなくなってきつつあります。

そのほか、技能実習生などが日本企業から劣悪な待遇を受けるなどの悪評が一部で拡散されているなど、日本で働く訴求力が薄れていっているのです。

関連:年収400万円でも不満 ハノイ工科大学の「日本離れ」(日本経済新聞) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC091QX0Z00C23A6000000/    

「NEXTベトナム」としての採用市場

このようなベトナムでの人材獲得に苦戦している現状から、ベトナムの次の市場である「NEXTベトナム」を見ている企業が増えているのです。「NEXTベトナム」として候補国を見渡したとき、やはりASEANが立地的にも文化的にも親和性が高く、ASEANが注目地域になります。そのASEAN人口約6億人の50%近くを占めている、インドネシア(人口2億8000万人)は見逃すわけにはいかない市場として注目され始めているのです。

平均年齢も30歳以下であり、日本語学習者も中国に続き、世界第二位となっています。この魅力から、現在人材獲得戦略を検討している企業が増えていってます。   現在、日本に在住するインドネシア人数はベトナム人の6分の1以下である8万人超。

今後どこまでインドネシアの人的・経済的な交流が加速するのでしょうか。    

著者

和田 海二(わだ かいじ)
キャリアダイバーシティ株式会社 代表取締役
早稲田大学国際教養学部卒業後、インドネシア・マレーシア向けインバウンドメディアに入社。その後、インドネシアに2年間駐在、現地の教育機関で現地スタッフ20名および学生200名をマネジメント。2020年、インドネシア人材キャリア支援事業を展開するキャリアダイバーシティ株式会社を設立。JETROインドネシアや慶應義塾大学SFCなどでゲスト講師として講演を実施。外国人雇用管理主任者、インドネシア・教育文化省主催インドネシア語コンテスト2023(リポーター部門)世界一位。BBCインドネシア、NHK Worldでの特集実績もある。