日本企業がイスラム教徒(ムスリム)の社員を受け入れる際に知っておくべきことは?

 

「イスラム教」と聞いて思い浮かぶのはどのようなイメージでしょうか。断食や礼拝、頭に布を巻いていることから、異文化そのものといったイメージを抱いている方も少なくないのではないでしょうか?

確かに日本では、学校や会社でも日常的にイスラム教徒(以下ムスリム)と関わる機会は少ないかもしれません。

今回はムスリムの方と関わる機会がなかった方々に少しでも一緒に働くイメージをもっていただけるよう、イスラム教についての概要を説明し、実際にムスリムのスタッフを受け入れる際に気をつける点をご紹介します。

関連記事:
インドネシアに在住してみてわかった「日本企業がインドネシア人材を採用しやすい3つの理由」
なぜ、今インドネシア理系人材が注目されている?アジアで起きている日系企業の人材採用の実態

イスラム教について

イスラム教は中東や東南アジアを中心に2020年時点で19億人もの信徒を抱え、キリスト教、仏教に並ぶ世界三大宗教のうちの一つの宗教です。

「イスラム教=中東・砂漠の宗教」というイメージが一般的には持たれていますが、実は世界で一番ムスリムが多い国はインドネシアです。インドネシアの人口は約2億7000万人といわれていますが、そのうち86.69%がムスリムで、ムスリム人口は2億3000万人を超えています。

日本企業が知っておくべき3つのポイント

(1)ヒジャーブ

ムスリムの女性はヒジャブと呼ばれる布を頭に着用します。イスラム教では女性の髪は男性にとって魅力的であるという考えであり、男性の視線を避けるために着用します。個人差はありますが、ヒジャブをつけている方は基本的に家族以外の方に髪を見せることはありません。

だからといって、仕事や業務に支障をきたすことはありません。色は自由なので、黒や紺色、ベージュなどTPOを弁えて着用します。

(2)礼拝

ムスリムは基本的には1日5回礼拝することが義務となっています。礼拝といっても、人がいない場所で一回あたり5〜10分で行います。空いている会議室や控え室、スタッフルームなどの空き部屋を使うことで、特別に部屋を作ったり設備を導入したりする必要はありません。広さは最低1〜2畳程度あれば問題ありません。

礼拝の時間帯は大まかに以下のような流れです。

1回目:日の出前

2回目:お昼

3回目:お昼過ぎ(3時頃)

4回目:日の出頃

5回目:夜

つまり、就業中に行う礼拝は2回目・3回目の2回となります。お昼の礼拝は休憩時に行い、3回目の礼拝は、5〜10分程度の礼拝休憩を挟むことになります。この程度で礼拝も対応できるので、決して難しい対応をしなければならないということではありません。

(3)異性の接触

イスラムでは家族以外の異性間の接触は基本的には行いません。日本では握手することがビジネスのシーンで見られることもありますが、異性のムスリムとの握手などは行わない方がいいでしょう。

もちろん信仰度・上記を実践する割合などは個人差がありません。ムスリムでもヒジャブを着用しない女性もいますし、礼拝をしない方もいます。ムスリムの中にも多様性があり、しっかりと事前に相談し礼拝が必要かどうかなどを確認しておくと、入社後の受け入れもスムーズできます。

渡辺麻友(わたなべ まゆ)
東京外国語大学国際社会学部東南アジア地域/インドネシア語専攻 在籍
インドネシアのガジャ・マダ大学 留学後、国際物理オリンピック2023でインドネシア語通訳、一部上場自動車メーカーでのインドネシア語通訳を務める。