インドネシアのレバランってどんな感じ?

ラマダンの記事に続いて「レバランって何?」「断食についてはなんとなく知っているけど、そのあとはどうするんだっけ?」という方に向けて、今回は2022年のインドネシアのレバランの様子をお届けします!

レバランって?

レバランは断食明け大祭のことで、1か月にわたる断食が終了した後に家族や親戚一同が集まってお祝いします。2022年のレバランは5月2日、3日でした。

この他にもインドネシア政府から「有給取得奨励日」が設定され、公務員は祝日となり会社員は有給休暇を取得することが推奨されます。2022年は4月29日(金)から5月6日(金)が有給取得奨励日にあたり、土日を含めて最大10連休となる大型連休になります。日本のゴールデンウイークと長さも時期もほぼ同じです。

この期間は国民の祝日なので授業もお休みになります。ただ、授業がないからとレバラン休暇用に課題を出す先生もいます。日本の大学と同じですね。

寮に住んでいる高校生や親元を離れて暮らす大学生はこの期間に実家に帰省します。履修している授業が全てオンライン形式で行われている学生の中には連休前から帰省している人もいました。個人差がありますが、大学生は2回の長期休暇、1回のレバランと年3回ほど帰省するようです。

帰省中は何をするの?

帰省した学生は実家で何をするのでしょうか?今回はなんと大学の友人の帰省に同行させてもらう貴重な機会をいただいたのでその様子をお伝えします!

期間は4月29日から5月8日の10日間です。連休の全てを友人の実家で過ごしました。ダイジェストにして振り返ってみましょう。

【1~3日目】

まずは家族との久しぶりの再会を喜びます。前回の長期休暇以来の3、4ヶ月ぶりの再会だそうですが、友人が満面の笑みで母とハグをしている様子が印象的でした。

友人の高校生の弟もこの期間に帰省しています。毎年レバラン休暇には友達の家に交代で泊まっていて、今年は友人の弟の家の番なんだそう。泊まりに来た友達は手土産に鶏の丸焼きを5羽分も持って来ていました。

この期間はまだ断食期間中なので3時に起き、1日のエネルギーを蓄えるべく朝食をとります。(ラマダン中の生活についての記事はこちら)

インドネシアでは1日に2回水浴びをするのが一般的なようです。お邪魔したお家にはシャワーではなく貯水槽のようなものがあり、そこから水を汲んで汗を流します。トイレを流すための水、水浴び、歯磨きの水は全て一緒です。最初は衝撃的でした。

そしてエアコンもないので、暑さに弱い私は常に扇風機の前で涼んでいました。

レバラン休暇を通して親戚の家を訪ねて回ります。この日も友人の父の兄弟の家にお邪魔しました。ご挨拶を済ませると所有する畑を見せに連れて行ってくれ、帰る時に袋の中にいっぱいに入ったお花を分けていただきました。インドネシアでは特に農家の間で物々交換が頻繁に行われていて、お互いの畑で採れたものを交換したり家畜と交換したりと分け合うことが日常的な行為のようです。この写真の野菜やお花は全て分けていただいたものです。

一家族で食べるには多すぎるので更に近所の人に呼びかけて、 欲しい人がいたらおすそ分けします。人からもらったものだけで1食分の食事ができてしまうこともあります。

そして子供たちのためのTHR(Tunjangan Hari Raya/レバラン手当)の準備をしました。THRとは会社員が各宗教の大祭の祝日に支給される、給与の1ヶ月分に相当する手当のことを指します。このTHRは大人のためだけのものではなく、親戚から子供たちにも配られます。日本でいうお年玉です。小学生などの小さい子供にはRp 10.000(日本円でおよそ85円) 、中高生にはRp 20.000(およそ175円)、大学生には Rp 50.000(およそ450円)を準備します。ポチ袋のような封筒にお札を入れて合計80枚も用意しました。THRには新札を使います。銀行で新札に換えるか新札を扱う路上商人のところで手に入れる場合もあるそうです。

【4~6日目】

5月2日は断食が明けて最初の日です(2022年)。日本の年越しの瞬間のように断食が明けたことを盛大にお祝いするのかと思っていましたが、意外にもそれほどお祝いムードはなく、気付いたら終わっていたというような雰囲気でした。

断食が終了した初日はムスリムが朝6時頃から一斉にモスクに集まります。男性は2階、女性は1階の外というように場所が分かれていました。シートの上に座り、流れる放送を聞き礼拝をします。今年もレバランを迎えることを告げ、気持ちを新たに切り替えます。全体の所要時間は体感では30分程度でした。

親戚同士だけではなく近所の人々ともお互いの家へ挨拶回りをします。一家の祖父母や両親、子供など一度に4~8人程度が訪れます。家のドアは日中は開放されていて、ドアの前のスペースには来客用のお菓子や果物がたくさん準備してあります。お昼ごろには食事を振舞うこともあります。

来客を迎えるだけではなく歩いて近所の家を回ります。1日で4、5軒を回り、行く先々で来客用のスペースへ通され、お菓子や飲み物が振舞われ、しばらく談笑します。

その賑やかさと一度にたくさんの人に会ったことから帰宅する頃にはへとへとになってしまいました。日中だけではなく20時を過ぎてからでもバイクで10分程度の距離にある親戚の家へと出かけ、更にそこで1時間ほどお菓子を食べながら談笑した日もあります。夜遅い時間でもみんなで大笑いしながら21時頃まで盛り上がっていました。

近所の人たちとの繋がりは特に女性たちの間でかなり強く、会話や物々交換の他にも家に集まってカラオケを楽しんでいる様子が見られました。スピーカーやマイクなど本格的な機材が揃っていました。

【7~10日目】

終盤も変わらず1日4~5軒ずつ親戚の家を回ります。親戚の家を訪問していると1日があっという間に過ぎるので、レバランは毎年同じようなスケジュールになるのだそうです。

この期間には親戚の結婚式がありました。レバラン休暇には親戚一同が集まるので結婚式をするタイミングとしてよく選ばれるそうです。式が行われる場所は友人の実家から更に車で5時間ほど移動した先にありましたが、レバランと結婚式のために飛行機で1時間半ほどかけてジャワ島の西から東まで移動してきた人もいました。結婚式については別の記事で詳しくご紹介します。

その他に友人の母が勤務している高校で”Halal Bihalal”という式典が開催されていました。

Halal Bihalalについてインドネシアのあるウェブサイトでは

「Halal Bihalalとはお互いに赦し合う集会である。この赦しはレバランを迎えた時に行うことができる。この集会は通常お互い握手をして謝罪し、謝罪された方もまた相手を赦し、そして謝罪する (筆者訳)」

と説明しています。

出典: SumberPengertian.ID ”Pengertian Halal Bihalal dan Maknanya”

学校の体育館くらいの広さの場所に特設ステージがあり椅子が並べられ、日本の学校での式典と形式は大差ありません。出席者には軽食と飲み物が配られました。式辞がひと段落した後は歌手を招いて歌を聞いたり、自由にステージで歌ったり、先生方が写真を撮ったりして過ごしていました。学校関係者やその家族のための懇親会のような雰囲気でした。

最後には家族とお互いの健康を願って別れ、大学のある場所まで帰っていきます。

以上がこの10日間の一連の流れです。いかがでしたか?

インドネシアではかなり人同士の距離が近く、繋がりも濃いように感じられました。特に子供好きな人が多く、子供は引っ張りだこになるので誰がお母さんかわからないなんてこともしばしば。一人の子供を地域または親戚みんなで育てているような雰囲気でした。

日本ではレバランの空気を体験する機会はあまりないかもしれません。興味を持った方はラマダンとレバランの過ごし方について調べてみましょう。いろいろな過ごし方が見られて面白いですよ!

著者:渡辺麻友(わたなべ まゆ)
東京外国語大学国際社会学部東南アジア地域/インドネシア語専攻 在籍
インドネシアのガジャ・マダ大学 留学