地方自治体によるインドネシア高度人材獲得戦略 — 技人国採用へのシフト —
日本の地方における人手不足は、これまでの「単純労働力不足」から「高度人材不足」へと大きくシフトしています。その中で、インドネシアを中心とした若く優秀な人材を、日本企業の中核人材として採用する動きが広がっています。
特に近年は、「技能実習」や「特定技能」ではなく、在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」に該当する高度人材の直接採用を前提とした取り組みが、地方自治体および国レベルで進んでいます。
本記事では、宮城県、静岡県、愛知県、愛媛県、そして国土交通省の取り組みを整理し、それぞれの戦略を比較します。
参考記事:なぜインドネシア人の理系人材は日本企業と相性が良いのか― エンジニア不足時代の新たな選択肢 ―
宮城県:政府連携によるハイブリッド型マッチング
宮城県は、インドネシア政府と連携したジョブフェアを軸に、人材獲得を進めています。特徴的なのは、技能系人材に加え、今後は高度人材の採用にも拡張可能な「ハイブリッド型スキーム」である点です。
具体的には、
- インドネシア現地での大規模ジョブフェア
- 日本企業との直接面接機会の提供
- 採用後の定着支援
を一体で実施しています。
対象人材は従来は技能実習・特定技能が中心でしたが、現在はエンジニアや技術職といった高度人材にも広がりつつあります。紹介先は宮城県内の製造業、建設業、サービス業などの中小企業です。
差別化ポイントは、「政府連携による信頼性」と「母集団の大きさ」です。現地政府との連携により大量の候補者を確保できるため、採用の選択肢が広がります。また、今後は高度人材にも展開可能な柔軟性を持つ点も強みです。

静岡県:海外大学連携による高度人材採用
静岡県は、明確に高度外国人材に特化した取り組みを進めています。特にインドネシアを含む海外大学と連携し、現地またはオンラインでの合同面接会を実施しています。
スキームとしては、
- 海外大学とのネットワーク構築
- 合同面接会(現地・オンライン)
- 採用後のフォロー
という流れで、最初から「正社員採用」を前提とした設計です。
対象人材は、理工系を中心とした大学卒業者であり、エンジニア、IT人材、技術職、海外営業などが中心です。紹介先は静岡県内の製造業や技術系企業であり、特に輸送機器や機械関連企業との親和性が高いといえます。
差別化ポイントは、「技能実習を経由しないダイレクト採用」と「大学連携」です。これにより、企業は将来の幹部候補となる人材を早期に確保できる点が特徴です。

愛知県:高度人材×オンライン伴走支援
愛知県は、高度外国人材の採用を促進するため、オンラインを活用したマッチングと企業支援を組み合わせたモデルを展開しています。
具体的には、
- 海外人材向けオンライン合同説明会
- インターンシップ受入支援
- 専門家による伴走支援
という三位一体のスキームです。
対象人材はIT・エンジニアなどの高度人材であり、製造業の高度化やDX推進を担う人材が中心です。紹介先は愛知県内の中小製造業であり、自動車産業を支える技術人材の確保が主な目的です。
差別化ポイントは、「オンラインによる母集団拡大」と「受け入れ支援の充実」です。企業側の採用ノウハウ不足を補いながら、高度人材の採用を実現する点に強みがあります。
愛媛県:インドネシア特化の高度人材戦略
愛媛県は、インドネシアにターゲットを絞った高度人材獲得モデルを展開しています。現地でのマッチングイベントを通じて、企業と人材を直接結びつけるスキームです。
具体的には、
- インドネシア現地での人材募集
- 面接会の実施
- 採用後の支援
というシンプルかつ実行力の高いモデルです。
対象人材は、エンジニア、営業、通訳、IT人材などの高度外国人材であり、企業の中核を担うポジションを想定しています。紹介先は愛媛県内の中小企業で、海外展開やDXに取り組む企業が中心です。
差別化ポイントは、「国別特化」と「戦略人材採用」です。インドネシアに特化することで効率的な母集団形成を実現し、単なる労働力ではなく“企業成長を担う人材”として位置づけている点が特徴です。

国土交通省:建設分野における高度人材(技人国)受入
国土交通省は、建設分野において「技人国」に該当する高度外国人材の受け入れを推進しています。従来の技能労働者に加え、設計、施工管理、エンジニアリングなどの専門人材の確保に重点を置いています。
スキームとしては、
- 海外大学・教育機関との連携
- 企業とのマッチング支援
- 制度整備による受入促進
という形で、制度面と実務面の両方から支援を行っています。
対象人材は、建設分野の技術者や施工管理人材であり、紹介先は全国の建設会社です。
差別化ポイントは、「制度主導によるスケール」と「高度人材への明確なシフト」です。単なる労働力確保ではなく、産業の中核を担う人材を確保する政策へと転換している点が大きな特徴です。
参考記事:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001890647.pdf
まとめ
これらの取り組みから見えてくるのは、日本における外国人材活用が明確に「高度人材中心」へと移行している点です。宮城県は大規模マッチングによる供給力、静岡県は大学連携によるダイレクト採用、愛知県はオンラインと伴走支援、愛媛県は国別特化戦略、そして国土交通省は制度設計による全国展開と、それぞれ異なる強みを持っています。
今後は、単なる人手不足対策ではなく、「企業の競争力を高めるための人材戦略」として、技人国人材の獲得がさらに重要になります。自治体ごとの特徴を理解し、自社に最適なモデルを選択することが、採用成功の鍵となるでしょう。


