インドネシアのTKA(Tes Kemampuan Akademik)とは?TKA制度の詳細を解説
インドネシアの教育制度には、この数年様々な変化が見られます。2005年の導入以来、全国一律の(小学校~高校の)卒業判定試験として行われていた国家試験 (Ujian Nasional = 通称UN) が新型コロナウィルスのため2020年に実施が中止されると、翌2021年度に正式に廃止されました。UNは地域格差の拡大、暗記型・一発勝負の試験形態、試験配布や監督のばらつき、カンニング問題などがあり信頼性に欠けるとし、当時の教育相が廃止の決定をしました。
その後政府は、合否よりも質・中身を問う新しい学力試験TKA (Tes Kemampuan Akademik)を導入。2024年度に高校からスタートし、2025年度から小学校と中学校にも拡大されました。このTKAは卒業判定には使われず、教育の質改善などのため、データ収集を目的とするとされていますが、中学校・高校・大学進学時にも実績枠(学力推薦のようなもの)での志願時にスコアが問われるため、導入スタート直後から多くの学校で重要視されている印象です。
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TKAとは?導入の背景と目的
TKAは卒業の合否を決める試験ではありませんが、全国共通の基準による学力データを提供し、学校間の成績を比較したり、進学時の学力評価に活用したりすることを目的としています。インドネシアでは学校ごとに評価基準が異なるため、成績表(rapor)だけでは生徒の学力を客観的に比較することが難しいという課題がありました。TKAはこうした問題を補完するための標準化された評価制度として位置付けられています。
試験科目は高校では国語(インドネシア語)、数学、英語が必修で、さらに理系・社会系の選択科目を生徒の進路・志望に応じて選ぶ仕組みになっています。小学校・中学校は国語(インドネシア語)と数学、更に2026年度からは英語も追加される予定です。

高校の選択科目には、数学上級、物理、化学、生物、経済、地理、歴史、社会学などに加えて、日本語、中国語、韓国語、アラビア語、フランス語なども含まれています。特に日本語が正式な選択科目として設定されていることは、日本への留学や日本企業への就職を目指す生徒にとっても注目すべきポイントです。
政府が強調する導入の背景は、公平性の確保、教育の質改善、信頼性の向上です。暗記や一発勝負で卒業の可否が決まることの生徒の心理的負担を減らすこと、地域ごとの得点(特に弱点)を把握し教育の政策に活用すること、従来の水増し採点や試験官の不正などを防ぐことが狙いです。
TKAの試験方式と2025年の受験状況
試験の形態もUNとTKAは違います。UNは紙ベースの試験でしたが、TKAはコンピューターベース試験 (CBT) です。これにより、より速い自動採点、公平性の確保、詳細なデータ分析が可能になったとされています。多くの島々からなる国土の広いインドネシアですが、遠隔地や小規模校でも、オフラインCBTや近隣校での設備シェア、スマホ受験などが導入され、都市部と地方の差の縮小もはかられています。
2025年の高校等のTKAでは、全国43,918校から約351万8,000人が登録しました。内訳はSMAが約175万人、SMKが約159万人、MAが約50万6,000人です。オンライン方式に加えて半オンライン方式も用意され、全国規模での受験を可能にする仕組みが整えられました。

政府の公式統計ページには試験の参加率や得点などが地域別に詳細に公開されています。実はこのTKAは任意の試験ですが、それにもかかわらず、公立・私立校共に参加率がとても高いです。2025年度の全国平均参加率は小学校で約98.5%、中学校で約97.2%、高校で約97%に達したという統計データが出ています。高校の統計では科目別の平均点も公表されていて、そのデータから英語と数学の低得点が課題として既に浮かび上がっているようです。その一方で、社会系科目の中の地理は平均点が高いということもわかり、科目ごとの強弱が見えます。こうしたデータが今後教育現場での改善の方向性を示す材料となるようです。
Tes Kemampuan Akademik - Tahun 2026
TKAの平均点と今後のインドネシア教育への影響
2025年の高校等のTKAでは、必修科目の全国平均がインドネシア語55.38点、数学36.10点、英語24.93点となりました。特に英語と数学の平均点が低く、今後の教育改善における重要な課題の一つと考えられます。一方、選択科目では地理70.36点、歴史62.72点、生物54.40点など、科目によって大きな差が見られました。約350万人規模の全国データから、地域・学校ごとの教育課題を把握できることは、TKAの大きな特徴です。
また、TKAは単なる学力テストではなく、進学時の評価にも関係する点が重要です。特に高校生にとっては、大学進学に向けて自分の学力を客観的に示す材料となります。今後、TKAのスコアが蓄積されれば、大学の入学選考だけでなく、インドネシア人学生の日本留学、日本企業への就職、教育機関同士の連携などにも活用される可能性があります。
導入・スタートからまだ新しいTKAですが、これからインドネシア全土の学力を客観的に集計・分析し、教育の質向上や地域格差を是正するための基盤となることが期待されています。
特に2026年からは、小学校・中学校にもTKAが広がり、インドネシアの教育段階全体で標準化された学力データを蓄積する方向に進んでいます。TKAは今後、学校間の教育格差を把握し、進学時の公平な評価を支えるための教育政策上の重要なデータ基盤へと発展していくことが期待されています。
著者
杏子スパルディ
2003年、留学先のアメリカでインドネシア人たちと出会い在米期間中インドネシアコミュニティにどっぷりとハマる。帰国後インドネシアに単身渡り現地採用で外資・日系企業にて合計14年勤務。現在はフリーランスのインドネシア語講師、コラムニストとして活動中。インドネシア人夫と小学生の子供二人と西ジャワ州ブカシ在住。「インドネシアと日本の架け橋に」をビジョンにオンラインコミュニティ、メラプティ交流会運営。異文化交流会、おしゃべり会、無料インドネシア語レッスンなど毎月開催中。
主な実績:
世界で働く女性のためのポータルサイト「世界ウーマン」インドネシア担当コラムニストにて毎月コラムを執筆・掲載
インドネシア人採用の専門メディア 「アジアンHRジャーナル」にて不定期でコラム執筆・掲載


