インドネシアと日本の土木・建築は何が違う?大学の学習内容とエンジニア採用のポイント
インドネシア人エンジニアの採用を検討する日本企業が増えています。特に、建設、土木、建築、設計、施工管理などの分野では、インドネシアの大学を卒業した理系人材が活躍する機会が広がっています。
一方で、「インドネシアの土木工学は日本の土木工学と同じなのか」「インドネシアの建築学では構造計算をどこまで学ぶのか」「土木工学を卒業していれば日本の建築構造設計の仕事ができるのか」といった疑問を持つ企業も少なくありません。実際には、インドネシアと日本で「土木」と「建築」の基本的な考え方は共通しています。しかし、大学での教育内容や、建物の意匠設計と構造設計の役割分担には違いがあります。
本記事では、インドネシアと日本の土木工学・建築学について、大学で何を学ぶのか、構造計算や設計をどの分野が担当するのかという観点から比較します。
インドネシアの土木・建築エンジニアが注目されている理由とは?企業が採用を検討すべき背景

1.インドネシアの土木工学・建築学は何を学ぶのか
インドネシアの土木工学は、インドネシア語で「Teknik Sipil」と呼ばれます。日本の土木工学と同様に、道路、橋梁、トンネル、河川、地盤、環境、施工など、社会インフラに関する幅広い分野を学びます。ただし、土木工学の中には「構造」を専門とする分野があり、ここでは建物や橋梁などの構造解析、構造計算、構造設計について専門的に学ぶ学生もいます。そのため、インドネシアの土木工学卒業者の中には、日本企業でいう建築構造設計に近い知識・経験を持つ人材も存在します。
構造分野では、構造力学、鉄筋コンクリート構造、鋼構造、耐震設計などを学び、大学や専門分野によってはSAP2000やETABSなどの構造解析ソフトを使用します。
一方、インドネシアの建築学は「Arsitektur」と呼ばれ、建物の意匠やデザイン、空間設計、建築計画などを中心に学びます。建築構法、材料、設備、環境などについても学ぶため、「建築学ではデザインしか勉強しない」という理解は正確ではありません。ただし、詳細な構造計算や構造設計については、構造を専門とするエンジニアが担当するケースが多く、建築設計者と構造エンジニアの役割分担が比較的明確になっています。
2.日本の土木工学・建築学との違い
日本の土木工学もインドネシアと同様に、構造、地盤、道路、橋梁、河川、水理、環境、施工などを幅広く扱います。ただし、日本では特に道路、橋梁、トンネル、ダム、河川、港湾、上下水道などの社会インフラを対象とする分野として認識されることが多くなっています。
一方、日本の建築学は、インドネシアと比較して「建築物を総合的に成立させる」という性格が強いといえます。建築設計や意匠だけではなく、構造力学、建築構造、建築材料、建築施工、建築設備、建築環境、建築法規なども教育内容に含まれます。そのため、日本の建築学科を卒業した人材が必ずしも「デザイン専門」というわけではありません。建築学の中でも、意匠、構造、環境、設備など、それぞれの専門分野に分かれていきます。
インドネシアと日本の大きな違いを整理すると、以下のようになります。
| 比較項目 | インドネシア | 日本 |
|---|---|---|
| 土木工学 | 土木構造物・社会インフラを幅広く学ぶ。構造分野では建物の構造計算を扱う場合もある | 道路、橋梁、トンネル、河川、ダム、地盤など社会インフラを幅広く扱う |
| 建築学 | 意匠・デザイン・空間設計を中心に、構造・施工・設備も学ぶ | 意匠・デザインに加え、構造・施工・材料・設備・環境・法規まで幅広く学ぶ |
| 建物の意匠設計 | 建築学が中心 | 建築学が中心 |
| 建物の構造設計 | 土木工学の構造系エンジニアが担当する場合がある | 建築構造を専門とする設計者が中心 |
| 橋梁の設計 | 土木工学 | 土木工学 |
| 道路・トンネル | 土木工学 | 土木工学 |
| 地盤・基礎 | 土木工学が中心 | 土木工学が中心 |
| 建築設備 | 建築・設備分野 | 建築・設備分野 |
| CAD・BIM | 土木・建築の双方で使用 | 土木・建築の双方で使用 |
このように見ると、両国で土木と建築の基本的な役割は大きく変わりません。しかし、建物の構造設計をどの分野の人材が担うのかという点には違いがあります。
3.CAD・BIM・構造解析ソフトの違い
土木・建築エンジニアは、さまざまな設計ソフトを使用します。
| ソフト・技術 | 主な用途 | 主な分野 |
|---|---|---|
| AutoCAD | 図面作成 | 土木・建築 |
| SketchUp | 建築デザイン・3Dモデル | 建築 |
| Revit | 建築設計・BIM | 建築 |
| SAP2000 | 構造解析 | 土木・構造 |
| ETABS | 建物の構造解析 | 建築構造・構造 |
| BIM | 建築・土木の情報管理 | 土木・建築 |
ただし、使用ソフトだけで専門性を判断することはできません。
例えば「AutoCADを使用できます」という人材でも、建築図面を作成していたのか、道路・橋梁などの土木図面を作成していたのかによって、実際の専門性は大きく異なります。SAP2000やETABSなどの構造解析ソフトについても、「使用経験がある」というだけでは十分ではありません。建物を対象としていたのか、橋梁を対象としていたのか、さらにモデル作成から解析、設計、検証まで本人がどこまで担当していたのかを確認する必要があります。

4.インドネシア人エンジニアを理解するうえで重要なポイント
インドネシア人の土木・建築エンジニアを採用する場合、「土木工学卒だから土木」「建築学卒だから建築」と単純に分類することはおすすめできません。例えば、同じ土木工学卒でも、橋梁設計を専門にしていた人と、建物の構造計算を専門にしていた人では、実際の専門性が大きく異なります。
同様に、建築学卒でも、意匠設計を専門としていた人と建築構造を専門としていた人では、対応できる業務が異なります。インドネシアと日本の土木・建築教育を比較すると、以下のように整理できます。
| 分野 | インドネシア | 日本 |
|---|---|---|
| 土木工学 | 土木全般を学び、構造を専門とする場合は建物・橋梁の構造計算も行う | 社会インフラを中心に、構造・地盤・道路・水理・環境等を幅広く学ぶ |
| 建築学 | 意匠・デザインを中心に学び、構造・施工・設備も基礎的に学ぶ | 意匠・デザインに加え、構造・施工・設備・環境・法規等を幅広く学ぶ |
| 建物の構造 | 土木工学の構造系エンジニアが担当する場合がある | 建築構造の専門家が担当 |
| 橋梁の構造 | 土木工学・構造分野 | 土木工学・構造分野 |
| 意匠設計 | 建築学 | 建築学 |
| BIM・CAD | 建築・土木双方 | 建築・土木双方 |
つまり、インドネシア人エンジニアを日本企業に紹介する場合は、大学の専攻名称だけを見るのではなく、「何を学んだのか」「何を設計したのか」「どのソフトを使ったのか」「どこまで担当したのか」まで確認することが重要です。
インドネシアには、土木工学を専攻しながら建物の構造設計を専門とする人材もいれば、橋梁や道路などの社会インフラを専門とする人材もいます。また、建築学を専攻していても、意匠設計だけでなく建築構造やBIMを専門とする人材もいます。そのため、日本企業がインドネシア人エンジニアを採用する際には、両国の教育制度や専門分野の違いを理解したうえで、候補者の専門性を個別に確認することが、採用後のミスマッチを防ぐうえで重要です。

