盛り上がる10年ぶりのインドネシア大統領選挙2024、見どころと争点を解説!
今年2024年はインドネシア共和国のリーダーである大統領を選ぶ10年ぶりの選挙が行われる選挙イヤーです。国を挙げての大イベントであり、2月14日の投票日が近付きつつある現在、大変な盛り上がりを見せています。今回のコラムでは、インドネシア選挙の基本情報と、今回10年ぶりとなる大統領選で注目される点、現地で肌で感じる国民の反応などについてお届けします。
インドネシア選挙基本情報
インドネシアの大統領の任期は5年で、最大2期まで。現職のジョコ・ウィドド大統領(以下ジョコウィ大統領)が2期の任期を終えるにあたり今年選挙が行われます。17歳以上のインドネシア国民による完全な直接選挙制で、国民の声(票)が直に結果に反映されます。
今回の大統領選の際には、国会議員の選挙も行われます。国民が投票にしに行くことができるよう、選挙当日は休日になり、更に飲食・娯楽・アパレルなど各ブランド・企業が投票済の人に特別な割引があるキャンペーンを用意し、ただでさえ国民の選挙への関心が高い中、投票率も更に上がります。選挙の日には、投票した印である黒いインクのついた指を見せながら撮った写真をSNSにアップする人たちも多く、「国民みんなの選挙」という印象が強いです。
また、選挙や誰を支持するかについてオープンに話す人が多く、みんなそれぞれの意見を持っています。政治に詳しくなくても、まわりの大人から聞いた話を元に、小学生の子供たちさえも「○○を支持する」と堂々と意見を言います。それが他人の意見と違ってもいいのです。このように子供のころから「選挙に近い」関係も、のちに実際に選挙権を得る年齢になってからの選挙への関心に通じているのかもしれません。
今回の選挙の争点・見どころ
日本語媒体の記事やニュースでも報じられているのが度々見られますが、現職のジョコウィ大統領の支持率は任期中ずっと高いです。インドネシア初の庶民出身大統領。派手なパフォーマンスはせずとも、着実にインドネシア経済の発展や、欧米・東アジア、インド、アラブ諸国をはじめ各国との外交の分野でも成果を見せてきました。そんなジョコウィ大統領の後任を選ぶ選挙です。同じ路線を政策に掲げる候補者、反対路線を示している候補者、それぞれが選ばれた場合、インドネシアがどうなっていくのか、国民はそれぞれの目で見ています。
今回立候補しているのは三組の候補者ペア。大統領候補が副大統領候補を指名しペアで立候補します。支持率は調査媒体によって違いがありますが、数回の調査結果を見ると、プラボウォ氏(2)とガンジャル氏(3)の二強という印象です。両者はジョコウィ大統領の政策を引き継ぐ方針です。一方もう一組、アニス候補(1)は反ジョコウィ路線を示していて、メディアで見る支持率は数字では低いですが、私の身近にも支持者がいます。
庶民派の現職ジョコウィ大統領と正反対のエリート(軍人)出身プラボウォ氏は、過去にも大統領選に出馬し、ジョコウィ氏とも戦っていますが、敗れています。しかし今回はジョコウィ氏の息子ギブラン氏を副大統領候補にたて出馬。三組の候補者の中で最も高い支持率を得ているようです。
ただギブラン氏と出馬したことで少し問題も見られます。ギブラン氏を副大統領候補に正式に指名する直前、出馬できる年齢が40歳以下であることが違憲とされていましが、公示日の直前に憲法裁判所がギブラン氏の年齢で出馬できることを認め、更に憲法裁判所の長官がジョコウィ大統領と縁者であることから、政界だけでなく、国民からもこの一件で多くのバッシングがありました。
庶民派として州知事の経験を経て大統領になり再選、十年間の任期を終えるジョコウィ大統領が権力に染まったという見かたもあり、以来巷では民主主義のインドネシアが「ジョコウィ王国」になるのでは、などと囁かれるようになりました。
そんな状況の中でもプラボウォ・ギブラン候補者ペアの支持率が依然高いのは、今回の選挙の「スター不在」も一因と言えるでしょう。先日、主宰するメラプティ交流会で、今回の選挙についてインドネシア人メンバーたちに話してもらいました。話してくれたメンバーの年齢は十代~四十代まで。民族も宗教も異なりますが、揃って口にしていた言葉は、支持したいわけではなく、一番無難だから○○を選ぶ、ということ。(そんな状況でもみんな投票する気持ちがあるのはさすがです!)
今のジョコウィ政権で安定・成長がみられるから、その路線を引き継ぐ候補者をとりあえず選ぶ、ということでしょう。また主にアニス候補についてですが、過去に目立った功績がないので支持したくない、という声もありました。プラボウォ候補に関しては、政界での経歴が長く、過去に起こした問題もあり、それを記憶している三十代以上のメンバーはプラボウォ支持に消極的でした。
このような状況の今回の大統領選挙。私自身は外国籍で選挙権はありませんが、選ばれる大統領によって、在住日本人や日系企業に少なからず(大きく?)影響があることは確かです。自分は投票できない立場であっても、やはり行方が気になります。同時に、子供から大人まで選挙の話で盛り上がり、候補者討論会やデモで盛り上がる街の様子を見て、同じ民主主義国でありながら、選挙の様子がまったくと言っていいほど違う日本を思い、選挙を楽しんでいるようにさえ見えるインドネシア人たちをうらやましくも思います。
外部リンク
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<現地大学紹介>インドネシアの東大「インドネシア大学 / University of Indonesia」
著者
杏子スパルディ
2003年、留学先のアメリカでインドネシア人たちと出会い在米期間中インドネシアコミュニティにどっぷりとハマる。帰国後インドネシアに単身渡り現地採用で外資・日系企業にて合計14年勤務。現在はフリーランスのインドネシア語講師、コラムニストとして活動中。インドネシア人夫と小学生の子供二人と西ジャワ州ブカシ在住。「インドネシアと日本の架け橋に」をビジョンにオンラインコミュニティ、メラプティ交流会運営。異文化交流会、おしゃべり会、無料インドネシア語レッスンなど毎月開催中。
主な実績:
世界で働く女性のためのポータルサイト「世界ウーマン」インドネシア担当コラムニストにて毎月コラムを執筆・掲載
インドネシア人採用の専門メディア 「アジアンHRジャーナル」にて不定期でコラム執筆・掲載