＜現地大学紹介＞スラバヤの名門「アイルランガ大学 / Airlangga University (UNAIR) 」

今回のコラムでは、ジャワ島東部スラバヤにキャンパスを構えるアイルランガ大学についてご紹介します。

関連記事：
＜現地大学紹介＞インドネシアの理系最高学府「バンドン工科大学 / Bandung Institute of Technology」
＜現地大学紹介＞インドネシアの東大「インドネシア大学 / University of Indonesia」
＜現地大学紹介＞バンドン工科大学に次ぐインドネシアの工科大学「スラバヤ工科大学 / Sepuluh Nopember Institute of Technology (ITS) 」

大学の歴史

アイルランガ大学の歴史はなんと、19世紀にバタフィア（現ジャカルタ）にまで遡り、オランダ統治下に設立された医学校がその前身です。1945年に第二次世界大戦が終わると、インドネシア政府の手に戻り、1954年11月10日、第9回目の英雄の日に、正式に国立大学となりました。

※英雄の日について詳細は、こちらのコラムをご参照ください。

学部

アイルランガ大学には、医学、歯学、法学、経済・経営学、薬学、獣医学、社会科学・政治学、科学技術学、公衆衛生学、心理学、文化科学、看護学、水産・海洋学、職業能力、先端技術、医療健康学・自然科学、の16の学部があります。

2023年度の出願者に最も人気だった学部ランキングトップ3は1位から順に、医学部、心理学部、薬学部でした。1位の医学部はなんと、90人の定員に対し3000人以上が出願しています。さすが、歴史ある医学校を前身に持つ、アイルランガ大学です。

主な卒業生

これまでのコラムで紹介してきたインドネシア国内のトップレベルの大学同様、卒業生には歴代の大臣、国会議員や知事、国営企業社長、最高裁判所裁判官、検事、ミスインドネシアなどの著名人の名前がずらりと並びますが、アイルランガ大学の卒業生には、いくつかユニークな点があります。

一つは、アイルランガ大学出身で歴代政府要職に就いてきた人たちは、保健省と法務省関連の名前が多い点です。最近ではCovid-19のパンデミック中の報道担当者もアイルランガ大学の卒業生でした。もう一つユニークな点は、インドネシア音楽界の大物たちがアイルランガ大学出身だということです。Padi Bandはメンバー全員が、Dewa19のボーカリストAri Lasso、Ada bandの元ボーカリストDonnieも同大学出身です。いすれもインドネシアで絶大な人気を誇ってきて、現在でもファンが多いレジェンド長寿バンドです。

インドネシア大学卒業生にも文学部出身の有名俳優などの名前がありましたが、アイルランガ大学の場合これらの有名ミュージシャンの名前が並んでいるのは、とても興味深いです。

最後にもう一人ご紹介した卒業生は、Ahmad Musyaddad氏です。アイルランガ大学で英文学を学んだAhmad氏は、インドネシア政府とアラブ首長国連邦の合同プログラムであるイスラムの礼拝リーダーに選抜されました。昨年宗教省がアラブ首相国連邦国内のモスクでのイマムを務めることができる若者を募集しました。

イマムとは、イスラム教徒が礼拝する際に、一番前の位置で礼拝をリードする大切な役割です。518人の応募者の中から44人に入るのがAhmad氏で、昨年アラブ首長国連邦の各モスクでイマムとしての務めを果たすため、インドネシアを出発したそうです。英文学専攻ですが、子供のころからアラビア語やアラビア文字に触れ熱心に学ぶムスリムが多いインドネシア人材ならではの活躍ではないかな、と感じます。

そして、知識や実力があってもこのような機会にを実際に掴むためには本人の自信や行動力が試されます。そのような素質を磨く教育を受けてきた成果ではないでしょうか。

著者

杏子スパルディ
2003年、留学先のアメリカでインドネシア人たちと出会い在米期間中インドネシアコミュニティにどっぷりとハマる。帰国後インドネシアに単身渡り現地採用で外資・日系企業にて合計１４年勤務。現在はフリーランスのインドネシア語講師、コラムニストとして活動中。インドネシア人夫と小学生の子供二人と西ジャワ州ブカシ在住。「インドネシアと日本の架け橋に」をビジョンにオンラインコミュニティ、メラプティ交流会運営。異文化交流会、おしゃべり会、無料インドネシア語レッスンなど毎月開催中。
主な実績：
世界で働く女性のためのポータルサイト「世界ウーマン」インドネシア担当コラムニストにて毎月コラムを執筆・掲載
インドネシア人採用の専門メディア 「アジアンHRジャーナル」にて不定期でコラム執筆・掲載