<現地大学紹介>インドネシアの理系最高学府「バンドン工科大学 / Bandung Institute of Technology」

今回のコラムでは、インドネシア国内最高レベルの理工系大学の一つ、バンドン工科大学についてご紹介します。

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バンドン工科大学設立の歴史

バンドン工科大学の歴史はオランダ植民地時代まで遡ります。その前身は、1920年に設立された高等教育機関、Technische Hoogeschool te Bandoeng(バンドン高等工業学校)です。日本の植民地下にあった1944年にはその名をバンドン工業大学と変えましたが、終戦後インドネシアの手に戻され、1959年には正式に現在の”Institut Teknologi Bandung” (バンドン工科大学、以下ITB)となりました。

バンドン工科大学の学部は?

バンドン工科大学には、地球科学技術、数学・自然科学、美術・デザイン、機械・航空工学、鉱業・石油工学、土木環境工学、産業技術、建築・企画・政策開発、ビジネス・経営、薬学、生命科学テクノロジー、電気・情報工学の12の学部があります。

2023年3月のデータによると、最も人気の学部トップ3(倍率順)は、地球科学技術、鉱業・石油工学、土木環境工学学部でした。いずれも120~150人の定員に対して志望者数は1000~2000人とかなりの倍率です。

卒業生には大物の名が並ぶ

バンドン工科大学の卒業生には、大物の名前がずらりと並びます。建国の父スカルノ初代大統領を筆頭に、ハビビ第三代大統領(中退しドイツへ留学)、リドワン・カミル元西ジャワ州知事もITBで建築を学んだ卒業生で、2023年12月現在の最新ニュースでは、新首都(予定)Nusantaraの開発キュレーターとしてジョコウィ大統領に指名されています。元大臣も複数人卒業生にいますが、ITB卒業生の活躍は政界だけにとどまらず、数々の映画を手掛けてきた有名映画監督、ジョコ・アヌワルもITBの卒業生です。

ハビビ第三代大統領

またインドネシアビジネス界のトップを走る実業家もいます。インドネシアではその名を知らない人はいないであろう、バクリーグループ創設者のアブリザル・バクリー、ハラール化粧品ブランドWardahの創設者や、国内に大手モールを何軒も建設してきたスマレコングループの創設者など、著名人の名前が連なります。

インドネシアで一番有名な化粧品ブランド「Wardah」

卒業後の高給が見込める?

ITをはじめとする理系学部の卒業生は、社会人になってからも給与が高めと言われますが、ITBの卒業生はどれくらいの給与を得ているのでしょうか?2021年のこちらの記事によると、ITBで情報科学を学んだ卒業生の平均月給が最も高く、16,000,000ルピア(約15万円)、それ以外の学科卒業生も多くが最低賃金の数倍の額の平均月給を受け取っています。

これは2020年のリサーチ結果によるデータですが、最近決定した2024年の西ジャワ州の最低賃金は2,057,495ルピアです。大卒となると最低賃金以上の月給は当然と思われるかもしれませんが、インドネシア国内最高峰のITB卒となると、最低賃金の4-5倍にもなる月給を受け取っていることになります。最近では、ITB卒業後に外資系企業に就職したり、日本をはじめとする国外の企業に就職する卒業生もいます。

古い歴史をもち、卒業生に大物が多いという“ブランド”だけではなく、キャリアや給与の将来性からも注目される大学と言えるでしょう。

杏子スパルディ
2003年、留学先のアメリカでインドネシア人たちと出会い在米期間中インドネシアコミュニティにどっぷりとハマる。帰国後インドネシアに単身渡り現地採用で外資・日系企業にて合計14年勤務。現在はフリーランスのインドネシア語講師、コラムニストとして活動中。インドネシア人夫と小学生の子供二人と西ジャワ州ブカシ在住。「インドネシアと日本の架け橋に」をビジョンにオンラインコミュニティ、メラプティ交流会運営。異文化交流会、おしゃべり会、無料インドネシア語レッスンなど毎月開催中。
主な実績:
世界で働く女性のためのポータルサイト「世界ウーマン」インドネシア担当コラムニストにて毎月コラムを執筆・掲載
インドネシア人採用の専門メディア 「アジアンHRジャーナル」にて不定期でコラム執筆・掲載