インドネシアの断食明け大祭「レバラン」

一か月間のラマダンの断食を終え、4月10日に今年のレバランを迎えました。国際的にはイード (Eid al-Fitr)と言われる断食明け大祭です。このレバランはどんなものかと聞かれると、よく日本人にされる説明は「お盆とお正月が一度に来たようなもの」とかつてはされてきましたが、現代の日本でははお盆やお正月の伝統への意識が薄れている地域・人も多く、なかなかイメージがしにくいと思います。

今回のコラムでは、インドネシアではレバランがどのように祝われるのか、詳細にお届けしたいと思います。

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国民の大移動、レバランの帰省

レバランはインドネシアのイスラム教徒にとって、一年の中で最も大切で盛大に祝われます。カレンダー上では2-3日のレバラン休暇も、政府の有給奨励日追加されるなど、毎年7-10日間の大型連休となり、首都圏に住む人たちもレバランの数日前から田舎に帰省、民族大移動となります。

レバランを家族で迎えることは、インドネシア人にとってとても重要なことです。コロナ禍では政府や企業により規制が実質禁止となった時期にも、多くの人たちが無理をしても田舎に帰省をしました。帰省を自粛した人たちもテレビ電話やZoomを使い、オンラインで親族同士でレバランの挨拶をする様子がメディアでも大きく取り上げられました。

レバラン当日の伝統

レバラン当日の朝、モスクに多くの人が集まり礼拝をします。その後自宅に戻るとまずは家族内で過去の過ちについて許しを請います。文字としてみるとなかなかわかりにくいかもしれませんが、自分が故意なく相手を傷つけたり嫌な思いをさせてしまったことも、ごめんなさいと謝罪をしあいます。

大人になっても子供は親の前にひざまずき手をとり許しを請い、この時に涙を流す人たちも多く、その姿は自然と見ているこちらの目をも潤ませます。その後親戚や隣人、友人の家を訪ねて同じように許しを請います。このためレバランの当日から数日間は、どの家も来客が絶えずやってきます。この時に子供たちはお年玉をもらいます。

またレバラン当日にはお墓参りに行く伝統もあります。日本のお墓参りの静かで厳かな雰囲気とは違い、インドネシアのお墓参りは賑やかです。お墓の周りにはお花の他に、おやつやおもちゃを売る屋台も並びます。お花も白い菊とは雰囲気が違い、赤やピンク、紫などカラフルな花の花びらがバナナの葉に包まれて売られています。お墓の周りに親族が集まり故人に祈りを捧げ、花びらを散りばめます。

レバランのごちそう

レバランと言えば欠かせないのがごちそうです。ごちそうというのは肉料理を指します。先述のように、年に一度のお祝いの日なので、普段食べないくらいの大量の肉料理を作って食べることも伝統です。牛肉、ヤギ肉、鶏肉の煮込み料理が定番で、ketupaと言われる、お米をバナナの葉に包んで茹でたものと一緒に食されます。

このように、インドネシアのレバランは、宗教・文化面でとても大切な意味を持つ一大イベントです。前述のようにコロナ禍に無理をしてでも多くの国民が帰省をしたかった理由が少しでも伝わったでしょうか。現代の日本人にはなかなか完全には理解できない価値観もあるかもしれませんが、もし身近な同僚などにインドネシア人イスラム教徒がいる場合、このコラムの内容を知っていたら、彼らの思いや文化と少し距離が縮まるかもしれません。

著者

杏子スパルディ
2003年、留学先のアメリカでインドネシア人たちと出会い在米期間中インドネシアコミュニティにどっぷりとハマる。帰国後インドネシアに単身渡り現地採用で外資・日系企業にて合計14年勤務。現在はフリーランスのインドネシア語講師、コラムニストとして活動中。インドネシア人夫と小学生の子供二人と西ジャワ州ブカシ在住。「インドネシアと日本の架け橋に」をビジョンにオンラインコミュニティ、メラプティ交流会運営。異文化交流会、おしゃべり会、無料インドネシア語レッスンなど毎月開催中。
主な実績:
世界で働く女性のためのポータルサイト「世界ウーマン」インドネシア担当コラムニストにて毎月コラムを執筆・掲載
インドネシア人採用の専門メディア 「アジアンHRジャーナル」にて不定期でコラム執筆・掲載