来日20年のインドネシア人が語る「日本生活の3つの鉄則」
将来日本で仕事をしたい、長く日本に住みたいと考えている方、将来日本で家庭を築いたり、子育てをしたりすることを思い描いたことはありませんか?インドネシア出身、横浜在住のシルフィアさんは20年前に夫婦で来日し、現在4人のお子さんがいらっしゃいます。シルフィアさんに日本での暮らしと子育てについてお話を伺いました。
日本語の大切さ
Q.来日してからいちばん困ったことはなんですか?
A.言語です。日本に来て、子育てを経験して、これまで3段階の日本語レベルが必要だと感じました。1段階目は、日本の生活に慣れるための基本的な日本語。買い物をしたり、医者にかかったりするための日常会話です。 2段階目は、子どもが幼稚園や小学校に通い始めてからの日本語。学校の責任者の方と話したり、子どもたちが何を勉強しているか理解したりするためには、より高い日本語能力が要ります。母語が日本語ではないので、自分の子どもがちゃんと日本語ができているかどうかが不安でした。また、親として、子供が使っている言葉が良い言葉か悪い言葉かチェックできないのも辛いところでした。 3段階目は、子供が思春期になってからの日本語です。中学に上がるころには、子どもは高度な日本語を話すようになります。同時に、家庭以外の場所で、日本の習慣を身につけていきます。言語の壁のために、成長していく子供の状態を把握する のに苦労するようになりました。
コミュニティの大切さ
Q.生活に役立つ情報はどうやって手に入れましたか?
A.来日してすぐの頃にとても助けになる情報をくれたのは、日本語教室の先生でした。日本語教室はボランティアの方々によって運営されていて、インターネットで見つけて通い始めました。 現在とても助けになっているのは、インドネシア人ムスリムコミュニティです。 SNSを通して繋がっています。宗教や国籍のコミュニティでは、文化的背景や考え方が似ているので、助け合いやすいです。イスラームの断食開けを共に祝うなど交流するだけでなく、問題があったときに相談したり、日本に生きるうえでの知識や 経験を共有したりすることができます。また、日本に住む外国人の、国籍を問わないコミュニティに属すこともおすすめします。より大きいコミュニティに属して幅広い経験を知ることで、外国人としてどのように日本に暮らすか、より深いことを学べるからです。
親子で言葉と文化を共有
Q.どうやってインドネシアの言葉や文化を教えましたか?
A.子どもたちは日本で育ちましたが、家ではインドネシア語を話しています。インドネシア語を子供の母語にしたいと決めた理由は2つあります。1つは、親子で円滑なコミュニケーションをとれるようにするためです。言語や文化は、性格や、生活の仕方を形作ります。彼らの成長を理解するのは、特に感情の面で大事ですか ら、親である私たちと同じインドネシアの言葉と文化を教えました。2つめは、文化や言語は、子供のためになると思ったからです。インドネシアにいる親戚とも交流し、気にかけてもらうことができます。また、日本とインドネシアの架け橋になって欲しいという思いもありました。
体験してわかること
Q.宗教的なことについては?
A.現在大学生の長女は、幼稚園から中学校は日本の学校に通いましたが、高校はインドネシアにある寮制の学校に行きました。大学に入って忙しくなる前に、自分の ルーツの文化、とくにイスラム教について理解を深めるためです。家でインドネシア語を使い、宗教のことを教えていたけれど、それでも日本にいるときに身につい たインドネシア語能力は日常会話程度で、宗教についても実践できる機会は限られていました。周りが皆イスラム教徒の環境に身を置くことで、理論だけでなく感覚でも自分の宗教を理解できたようです。
日本で生活するための3つのアドバイス
Q.日本で暮らすにあたって、最も大切なことはなんでしょう?
A.3つあります。まず、日本語を理解すること。とても難しいけれど大事なことです。 次に、心構えをもつこと。もし短期滞在なら、日本でしかできない経験を多くして、自国に持って帰りましょう。でも、長期で日本に住みたいなら、日本の習慣を学ぶことは大事。マナーや文化、考え方を理解するように努めて、社会に受け入れてもらえるよう心がける必要があると感じています。 最後に、何らかのコミュニティに属すこと。日本で暮らす上で助け合えるし、学び合えるからです。
編集後記
今回は、長く日本に暮らす経験を積んでこられたシルフィアさんを取材させていただきました。来日当初はSNSもないなかで人と繋がり、以来強い信念をもって子育てをしてこられました。外国人として日本で子育てをするという前例が少ないなかで、柔軟な姿勢で生き方を見つけていくことの大切さがわかりました。この記事が皆さんの将来を思い描くきっかけになれば幸いです。