インドネシアのラマダンってどんな感じ?~2022年のラマダンを日本人留学生が現地からレポート!~
世界最大のムスリム人口を誇るインドネシアでのラマダン(断食)は実際にどんな雰囲気なのか気になりませんか?
今回はインドネシアで実際に肌で感じたラマダンを現地からお届けします!
ラマダン中のインドネシアの日常生活
ラマダン期間中は普段の生活とどんなところが変わるのでしょうか?
ラマダン月の間は日の出から日没まで食べ物や飲み物を一切口にしないので、日の出前に起きて食事を済ませ、1日のエネルギーを蓄えます。
地域やお店によりますが、日の出前(朝3時前後)でもいくつかのスーパーマーケットやwarungと呼ばれる屋台が開いていて、GojekやGrabなどのデリバリーサービスも使用可能な場所もあります!
この左の写真はラマダン期間中は16時から4時まで営業していることを宣伝しているwarungの広告です。デリバリーサービスにも対応していることをアピールしています。
友人のインドネシア人大学生はラマダン期間中は夜2時頃に出かけて家の近くのwarungでチキンを買っているそう。日の出前の食事がその日1日のエネルギーになるので、早朝と言えどチキンのようにしっかりと食べ応えのあるものを食べた方がいいという考えのようです。
更に地域によりますが、朝3時頃に子供たちが街を練り歩いて楽器を叩き、断食開始に備えて食事をとっておくように住人を起こしに来ます。大通りでは車やバイクの通りが多く危険なので、子供たちが比較的歩きやすい細い道で行われるようです。
右の写真は日中のwarungの様子です。断食中の人が他の人の食事の様子を目にすることがないようにという配慮からこのように目隠しがされています。断食をしない方も断食中の方の目の前で飲食することを避けるなど、尊重する姿勢が見られます。また、ラマダン期間の日中は売り上げがかなり下がるため日没後から営業を開始するwarungも数多く見られます。
夕方16時ごろになるとKakiLimaと呼ばれる屋台商人が軽食を売りに来て、道に屋台がずらっと並びます。1人で引いて歩けるほどの小さな屋台です。カラフルな屋台においしそうな食べ物がたくさん並ぶ様子はお祭りのようで見ていてとてもわくわくします。
安いもので700ルピア(日本円でおよそ6円)、高くても3500ルピア(およそ30円)で買うことができました。
これは一日の断食を終えたあとに胃を食べ物に慣らすため、軽食から食べる習慣があるからなんだそうです。
BawangGorengというニンニクの揚げ物やPukisというカステラのようなお菓子、Onde-Ondeというごま団子のようなものが特に人気のようでした。
下の写真は”EsJelly”といい、氷の入ったカップに自分で好きなゼリーやタピオカを入れていき、フルーツ味のシロップをかけた飲み物です。シロップはライチ、イチゴ、メロンなどかき氷のシロップ同様の品揃えでした。カップからスプーンですくってゼリーを食べ、シロップを飲みます。断食明けの空っぽの胃にもやさしく、定番の飲み物のようです。
更にはデーツ(ナツメヤシ)を断食明けに食べる習慣があり、ラマダンの期間に入るとスーパーマーケットにはデーツ売り場が作られます。レストランでも自由に取っていけるようにデーツが置いてありました。この習慣はイスラム教預言者ムハンマドが断食明けに最初にデーツを食べていたというのが起源とされています。そのため断食明けに最初にデーツを食べることは「よきムスリム」として評価が高い行いなのです。
ジョグジャカルタでの2022年4月のラマダンについては17時45分ごろに断食の終わりを告げる放送が流れます。断食開始、終了時刻は日によって変わります。基本的にはどのような場所にいても断食の終了を知ることができるようになっていて、スーパーマーケットの店内にも放送が流れます。サイレンのような音が試着室の中にも聞こえてきました。
下の写真は”Shopee”というECサイトアプリのラマダンセールの画面です。商品が1ルピアで販売されています。1ルピアは1円にも満たないほどの価格なのでほぼ無料といっても過言ではないのですが、どのようにして支払うのか気になりますね。
試しにある商品をクリックすると、値段がなんと1ルピアではなく定価で表示されます。しかも1ルピアに割引されるのは画面上では4月4日となっているのですが、4月3日の時点で既に売り切れていました。広告の一貫だったのかもしれません。
ラマダン中の学校生活(授業・部活動)
続いて、大学生の学生生活はラマダンでどのように変わるのでしょうか?
まず授業はラマダンに関係なくいつも通り行われます。現在は全てオンライン授業なので暑い中外に出る必要がなく、体の負担も少なめかもしれませんね。
部活動については、例えば通常は16時から18時で練習が行われていたものが、断食後の食事をとってから活動できるよう20時から22時の練習に変わります。あるいは、17時半ごろに食べ物を持ち寄って練習場所に集まり、みんなで断食明けの食事をとってからそのまま練習することもあります。ラマダン期間中はお休みになる部活動もあります。
夜22時まで部活動の練習をしてから帰宅し朝3時頃には起きて食事をとるというのはとても大変そうだと思い、大学生の友人に話を聞いてみました。睡眠は足りているのかと尋ねたところ、友人は「足りているとは言えないが、ラマダンの期間はこれが普通でずっとそうしてきたから」と答えました。更に最近は夜には眠らず、朝から昼にかけての空いた時間で睡眠をとっているとのことでした。大学生だからこそできる睡眠時間の確保の仕方ですね。
ちなみにこちらの大学の礼拝所では様々なゲストを招き、ラマダンについてのテーマで講演を行っています。直接礼拝所で講演を行う方や、生配信形式で講演を行う方もいらっしゃいます。ゲストスピーカーは大学教授から教育省省員、州知事までと多様です。
写真はジャカルタ州知事アニス・バスウェダン氏が講演に訪れた際の様子です。日本で例えるなら東京都知事が京都府の仏閣で講演を行うようなものでしょうか。歓迎ムードがうかがえますね。
まとめ
当初は「ラマダン=辛いもの」というイメージがありましたが、実際に経験してみて、加えて友人や街の様子を見てみると、ただ辛いだけのイベントではないようです。
みんなで一緒になって断食という一つのことに取り組み、断食明けの食事を共にする様子はとても活気があり、団結力さえ感じさせられました。
実際に「ラマダンは楽しいから頑張って」「ラマダン期間中の夜はお祭りみたいな雰囲気になるから好き」といった声も聞かれました。
ラマダン期間にインドネシアに滞在される皆さまもぜひその空気を全身で感じてみてくださいね。
著者:渡辺麻友(わたなべ まゆ)
東京外国語大学国際社会学部東南アジア地域/インドネシア語専攻 在籍
インドネシアのガジャ・マダ大学 留学